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WordPress は遅い、を疑う — AWS 無料枠で組む「記事が増えても重くならない」構成

冒頭でスコアを出しておきながら言うのも何ですが、この 98 点はまだ「ご祝儀スコア」です。記事はまだ 1 本、プラグインも最低限。コンテンツが増えれば普通に重くなる構成なら、半年後に 70点台に転落 することもザラにあります。

この記事の主題はむしろ 「コンテンツが増えても重くならない構成を、最初に組んでおく」 ことです。AWS 無料枠の中で WordPress を運用するなら、最初の設計が後の運用コストと表示速度を決めます。インフラを触れるエンジニアで、かつ WordPress の遅さに諦めかけている方が対象です。

1. なぜ WordPress は「遅くなる」のか

WordPress 自体が遅いのではなく、典型的なホスティング環境との相性が悪い ことが本質です。

  • リクエストごとに PHP 実行 → MySQL クエリ複数回 → HTML 組み立て が発生
  • プラグインを追加するたびにこの処理が膨らむ
  • 共有レンタルサーバーでは オブジェクトキャッシュ・ページキャッシュ・CDN の自由度が低い
  • HTTP/2、Brotli、TLS チューニングなども管理者側でフルにいじれない

つまり遅さの正体は「アプリの仕組み × 環境の制約」の二重苦です。逆に言えば、環境側を自分で組めれば WordPress は十分速い。記事が増えても遅くならない構成は、環境設計でほぼ決まります。

2. AWS 無料枠は 2025年7月に大改定された

これから AWS を始める方は、まず制度が 2 つあること を知っておく必要があります。2025年7月15日を境に、新規アカウントの扱いが変わりました。

旧プラン(12ヶ月無料)新プラン($200 クレジット)
対象2025-07-15 以前 にアカウント作成2025-07-15 以降 に新規作成
内容主要サービスが12ヶ月間 無料枠あり + 一部 Always Freeサインアップ時 $100 + タスク達成で最大 $100 = 最大 $200 のクレジット(6〜12ヶ月有効)
期間後通常課金クレジット消化後は通常課金

出典: AWS Free Tier — Pricing & Free Plan

私自身は 旧プランで運用中で、2026-10-27 に無料枠が終了します。今回の記事はそれまでの実体験です。

これから AWS を新規開設する方は新プラン($200 クレジット)に自動的に振り分けられるため、「24時間まる1年無料で動かし続ける」運用は不可能 です。代わりに $200 の範囲内で半年〜1年回す、という別の発想になります。

3. ozlab.jp の構成 — 役割分担で速さを買う

無料枠を最大限活用しつつ WordPress を高速に動かす鍵は 役割分担 です。各層に専門の担当を置き、EC2 には極力仕事をさせません。

[ End User ]
    ↓
[ CloudFront ]  ← 静的ファイル & キャッシュ可能ページを完全配信
    ↓ Origin Request(管理画面と新規記事の初回のみ)
[ EC2 t3.micro ]
  - nginx(リバースプロキシ・静的ファイル)
  - php-fpm(WordPress 実行)
  - redis6(Object Cache 永続化)
    ↓
[ RDS db.t4g.micro / MySQL 8 ]
役割リソース無料枠の対応
アプリサーバーEC2 t3.micro × 1(東京)750時間/月 ✅
DBRDS db.t4g.micro / MySQL 8750時間/月、20GBストレージ ✅
エッジ配信CloudFront(ALB なし、EC2 直)1TB/月 + 1000万リクエスト ✅
DNSRoute 53 ホストゾーン$0.50/月課金 ⚠️
ストレージEBS gp3 8GB30GBまで無料 ✅
TLS 証明書ACM(CloudFront 用)無料・自動更新

ALB を 使わない のがコストのキモです。ALB は Always Free 対象外で月 $20 前後かかってしまうため、CloudFront → EC2 直 で置き換えています。

出典: Amazon CloudFront — Pricing
出典: Amazon Route 53 — Pricing

4. 「記事が増えても重くならない」を担保する 4 つの設計判断

スコアを維持できるかは、最初の設計で決まります。具体的なコマンドや設定ファイルは別途 note の有料記事にまとめますが、考え方の幹は以下の 4 つです。

4-1. CloudFront でフロントを完全に終端する

オリジン EC2 に届くリクエストを 「管理者操作」と「新規記事の初回閲覧」のみ に絞ります。それ以外は全て CloudFront から返します。記事が増えても オリジン負荷はほぼ変わらない のがポイントです。

4-2. Redis Object Cache で WordPress 内部のクエリを使い回す

WordPress は wp_options などの同じクエリを何度も走らせる仕組みです。Redis Object Cache を入れて結果をメモリで使い回すことで、プラグインを増やしても DB 負荷が線形に伸びない構造にできます。

4-3. PHP-FPM のワーカー数を t3.micro に合わせる

t3.micro は メモリ 1GB。ワーカー数を欲張ると OOM で落ちます。pm.max_children を控えめに絞り、その代わり前段の CloudFront でリクエストを減らすことで、少ないワーカーでも捌けるようにします。

4-4. 画像配信を最初から最適化前提にする

メディアライブラリが膨らんだ時点で取り返しがつかなくなる典型例です。WebP 自動変換・遅延読み込み・サイズ別バリエーション生成 を最初から仕込み、CloudFront のキャッシュキーに乗せます。

各設計判断の 実コマンド・設定ファイル全文・つまずき点・チューニング数値 は、別途 note にて有料公開予定です。タイトル仮『t3.micro で WordPress を PageSpeed 98 にした完全実装ガイド』。公開時にこの記事に追記します。

5. 「無料」のはずなのに請求が来る話

ここは無料記事として出す価値があるので、しっかり書きます。無料枠の中で最大限組んでも、月 $1〜2 程度は確実に請求される のが実情です。

5-1. 必ず課金される項目

項目月額備考
Route 53 ホストゾーン$0.50無料枠対象外、ドメインを使う以上避けられない
データ転送(アウト 100GB 超過)超過分 $0.114/GBサイトが伸びると効いてくる
EBS スナップショット$0.05/GB・月無料枠は 1GB のみ、数 GB 置きっぱなしで月 $0.5

出典: Amazon EBS pricing

5-2. 落とし穴になりやすい項目

  • Elastic IP の未使用課金 — EC2 に紐付けない Elastic IP は時間課金(月 $3.6 相当)
  • NAT Gateway — 安易に VPC 設計に入れると月 $30〜
  • CloudWatch Logs — ログ流し過ぎると 5GB 超過で課金
  • 複数インスタンス起動 — 750時間/月は アカウント全体の合計。2台同時稼働で半分

5-3. Budgets アラートだけは最初の 5 分で設定する

AWS Console → Billing → Budgets → Create budget
  Threshold: 月 $1 で警告、$5 で警報

これを後回しにすると、設定ミスで気付かないうちに月数十ドルになっていた、という事故が起こります。

6. 無料枠終了後どうするか

私の場合 2026-10-27 で 12ヶ月の無料枠が切れます。そのときの選択肢:

選択肢想定月額評価
そのまま AWS で課金運用$20〜30為替リスクあり、円建てで年々不利に
国産クラウド(さくらのクラウド等)に移設月 1500〜3000円為替リスクなし、別途検証中
レンタルサーバーに戻す月 500〜1500円WordPress だけなら十分、ただし自由度低下
静的化して S3 + CloudFront月 $1〜3更新頻度が低いブログなら最適

「無料だから AWS」の次に来る判断軸として、為替・運用コスト・自由度 をどう天秤にかけるかが本題になります。これは別記事で扱う予定です。

7. まとめ

  • WordPress = 遅い」は環境側の制約が原因。インフラを自分で組めば PageSpeed 98 は出る
  • ただし 記事1本での 98 はご祝儀。重要なのは 記事が増えても落ちない構成 を最初に組むこと
  • AWS 無料枠は 2025年7月から新旧 2 制度 が併存、これから始める人は 新プラン が前提
  • 構成は CloudFront でフロント完全終端 + EC2 + RDS + Redis Object Cache の役割分担
  • ALB は使わず CloudFront でフロント終端、これがコストのキモ
  • 「無料」と言いつつ Route 53 などで 月 $1〜2 は確実に発生
  • Budgets アラート設定は 最初の 5 分
  • 無料枠終了後の出口戦略は早めに検討すべき

速くて、ほぼ無料で、自分で全部触れる WordPress 環境」は、ちょっとインフラが分かれば現実に組めます。レンタルサーバーで遅さに諦めかけている方は、ぜひ一度 AWS 無料枠で再挑戦してみてください。

実コマンド・設定ファイル・運用 Tips をまとめた 実装ガイドは note で有料公開予定 です。半年後にもこのスコアを維持できているか、続報で答え合わせします。


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